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鳥取家庭裁判所 昭和47年(少)364号 決定 1972年8月28日

少年 K・S(昭三二・一二・三生)

主文

少年を医療少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は

(1)  昭和四七年七月二八日午前三時ごろ、当時収容されていた米子市○×××番地教護院○多○学○内の職員住宅○崎○方勝手口から同居宅内に侵入し、同家六畳の間で睡眠し抗拒不能の状態にあつた○崎○由○(昭和三三年六月六日生)の乳房に手を触れる等のわいせつ行為をなし

(2)  同月二九日午前三時ごろ、上記○崎方便所の窓から同居宅内に侵入し、同家寝室で睡眠中の上記学園教母○崎○子(昭和七年九月二四日生)の傍に添寝し、熟睡して抗拒不能の状態にあつた同女の乳房に手を触れるわいせつ行為をなし

たものである。

(上記事実に対する適条)

(1)、(2)の各事実中、住居侵入の点につき刑法一三〇条、準強制わいせつの点につき同法一七八条、一七六条。

(処遇について)

本件は鳥取中央児童相談所長から送致されたもので、その送致事由の要旨は「少年は中学一年生のころから盗癖があり、昭和四五年六月二三日以降数回の窃盗行為をなし、その行状は重症的となり、保護者(母)の監護能力もないため、同年八月一日付にて教護院○多○学○に収容保護を加え、同園入所当初は無断外出等の反則行為があつたが、遂次その非行性は良化されつつあつたところ、突然再度にわたる上記非行事実を犯すに至つたもので、その非行内容からして、もはや上記開放施設での教護は困難であり、また、少年は本件非行についての反省の態度も薄く、このまま放置すれば再非行の虞があるので、その行動の自由を拘束し得る国立教護院の施設に収容して教護するための強制的措置を求める。」というものであつて、調査の結果によれば、少年の盗癖は小学二年時ごろから始まつているものとみられるほかは上記送致事由のとおりの事実が認められ、今なお母のみの欠損家庭において同保護者の監護能力には期待できない状態にあつて、少年の非行性は強力な施設に収容して教護、矯正を図る要あるものと認められる。ところで、鑑別の結果によれば、少年は自制力に乏しく気分易変性がかなり強く、自己中心的で欲求充足のための即行性が顕著な資質とみられ、特に精神科医の診断によると、少年はヒステリー性性格異常者であつて、異常脳波(毎秒一〇~一一サイクルの棘波および三~五サイクルの徐波)が認められ、相当期間の内服治療を要するものであることが認められるので、その病状の治療とともに社会的適応性を養成するためこの際医療設備のある矯正施設に収容保護を加えその健全な育成と保護の万全を期する要あるものと認め、少年を医療少年院に送致することとし、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項後段、少年院法二条五項を適用して主文のとおり決定する。

なお、医療少年院において早期に医療成果を得た場合は、少年の年齢、非行性、家庭環境を考慮し、保護者の住居地に近い初等少年院において矯正効果を期するのが望ましいと思料する。

(裁判官 土井仁臣)

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